爽子のSideM日記

アルジョのPになった

SideM硲道夫はこんなクソな人間でも救ってくれるという話

死ぬほど勉強が嫌いだ。


なんなら今すぐにでも縄文時代に行って、フーリエ積分やベクトル解析というものをやらなくてもいい時代に飛びたいと思っている。
ニュートンが林檎を見た瞬間をずらして少しでも数学の進歩を遅らせたいとは常々思っているし、なんならずっと天動説でもいい。
男はマンモスを追いかけ続け、女は家で子供を育てる時代だと言われても、それが叶うのであれば私はマンモス隊に志願する勢いだ。生まれた場所が古代ヨーロッパであるならば、私はテルマエ・ロマエのように風呂を作る肉体労働奴隷にでも参加しよう。


そのくらい、勉強はしたくないし好きだと思ったことは一度もない。
趣味はアイドル育成とその応援、そしてヲタ活。
特技は時間の浪費。
小中はクソ頭でもちょっとばかし出来てしまったがために、その後は難易度高めのところに進学してしまった。
めちゃめちゃ後悔している。
中学の3年の夏に決めたことがどれだけ大きいものだったのか、あの頃の自分は微塵もわかっていなかったのだ。もし目の前に中学3の自分がいるのなら、往復ビンタ以上に殴って目を覚まさせてやりたい。


ところがそうも言っていられない。
私は再来年の卒業を目指して、今4年目を迎えた。ところがこの4年目がはちゃめちゃに難しい。いわば頭の悪い奴は5年にさせないための期間ともいえる。私のクソ頭は爆発寸前だ。



そんなとき、S.E.Mと出会った。
アイドルマスターSideMの元・教師グループ「S.E.M」である。
S.E.Mは数学教師の硲道夫と化学教師の山下次郎、英語教師の舞田類の3人で構成されている(Science & English & Mathematics で「S.E.M」だ)。

どれもこれも、理系だ。
そして全て私の大嫌いな教科である。
どれも再試はもれなく全て受けたことがあるし、数学に至っては私が人生で一番最初になくしたいものは何かと聞かれたら0.1秒たたずとも「数学」と答えるであろうものだ。


最初はちょっとした興味だった。
たまたま見たPVで一番最初に印象的だったのが彼らだったのだ。
私が見たPVは3rdライブの幕張公演で、いわば全てのグループが出演する回だった。
その中で、ピンクの衣装を着てラインダンスをしているグループに目がついた(メンバーに知っている声優さんがいたからということもあるかもしれない)。
歌唱力が半端なくて、しかもちょっとメラメラとした銀と蛍光っぽいピンクというキテレツな組み合わせの衣装。気にならないという方がおかしかった。


何回かそのPVを見ていたとき、彼らが歌っている歌詞が耳に飛び込んできた。

「Your Future! 学んだらきっと気付くだろう 無限に答えがあることに」

「可能性は∞さ! You can change your world…自由はきっと 描いていい、魅せてくれよ  Try! 現状(いま)を 越えて」


心臓がドキリと鳴った。
しばらくして彼らが元教師のグループであることを知った。
うわぁ、最悪だよ、私と一番相性が合わないやつじゃん。
それでも、彼らを見ないという選択肢を取ることができなかった。もうその時点で私はS.E.Mに白旗を上げていたのだろう。
彼らは生徒に勉強の面白さ、楽しさを伝えるためにアイドルをしていることを知り、私が高校生のときにこんなに親身になってくれる先生がいたらどんなによかっただろうと思った。

いつしか、彼らS.E.Mが伝えたいと思っているメッセージに心打たれて、彼らのPとして、硲道夫担当として日々を生きるようになっていた。

「可能性は∞」
「何処へでも行けるってことだろう、歩き出せ」
「Let’s Think! 何だっていい… そう、君の『面白い』から色んな疑問探して そうさ一緒に答を見つけて辿り着くため… 俺たちがいるのさ!」
「勉めて強くなろうとする君のために 少しだけ先に生まれた経験を手渡そう」

「キミハデキル! ナンダッテデキル!
キミハナレル! ナンニダッテナレル!」


『From Teacher To Future!!』をライブ映像でフルで聞いたとき、私はボロボロに泣いた。
私は一体何をやっているんだろう。
何をしているんだ、何をもう駄目だと決めているんだ。
道夫なんて32歳で高校生教師から転職してアイドルになると決めたんじゃないか。
道夫よりも年下の私が、まだ何も始まっていないのに何をそんなに諦めかけているんだろう。

これが"キャラクターに元気をもらう"ということなのかと初めて知った。
今まで2次元キャラクターに笑顔をもらうことはあってもそれは一時の休息に過ぎなくて、何かをする原動力になる存在ということにはほど遠かった。
でも彼は違う。
硲道夫は、私に「こうしている場合じゃない」という原動力と、勇気と、元気と、笑顔をくれる存在になった。ありがとうありがとう。今こうして現実にしがみつけるのはあなたのおかげです。


彼と出会って、私は夢を見つけた。
それを叶えるためには努力しかない。
1+1が味噌スープではなくちゃんと2になるミジンコ以上の頭にならないといけないが、硲道夫とならきっとどんなことでも乗り越えられるような気がしている。勝手に。

S.E.Mと出会えたことは一生の宝物になるだろう。
私がこんなにクソオブクソ人間でなければきっと出会えなかったであろうS.E.Mは、私の尻叩きにきてくれたのだろうと思うのだ。まさに運命としかいいようがない。


私は再来年の卒業を目指して今奮闘中である。そのために私は今日も勉学に励むことにする。
いつも頭の中で「キミハデキル!」と言ってくれている彼に良い報告がしたいという一心で。



硲先生、お誕生日おめでとう。
いつまでもいつまでも、円周率が有理数になるその日まで、あなたについていきます。